千葉市 船橋市 精神科 心療内科 にじの空クリニック

大人の発達障害(自閉症スペクトラム症 注意欠陥多動性障害ADHD)

自閉症スペクトラム症(ASD)

端的にいうと、今の世の中のレールにのれない、生きづらさを抱えた方たちです。軽度ですと、個性的でちょっと変わっている人と評価されるとか、組織や集団に馴染めていないなどですが、人間関係でいつも苦労して、どこにいっても仕事が続かないなど、生活に大きく影響するときもあります。
3つのカテゴリーの特徴があります。

1)コミュニケーション
聴力に問題がないけれど、幼少時言葉が遅かったという方から、全く問題ないタイプまであります。やたら丁寧語で場にそぐわない感じや、大きな声で話し、場をわきまえていないように見える、単調で抑揚がない話し方、ボティーランゲージや笑顔、うなずきがうまくできない、抽象的な概念がわからないので冗談が通じない、独り言が多い、興味のあることは一方的に話し続けるなどです。


2)社会性
幼少時は友達と遊ぶより、一人遊びが多かった、ごっこ遊びができなかった、接触されることが苦手、思春期も性への興味がない、成人でも友人は少なく、喜びや悲しみを共有できないなどです。


3)行動
こだわりといってよいような常同行為、たとえば幼少時なら、くるくる回る、身体を揺らす、手をたたく、頭を打ち付ける、奇異な姿勢など。モノの一部にのみ興味をもったり、とても細かいことに没頭したり、収集癖があったりします。食べるものがいつも同じ、物の位置やすることの順番が決まっている、予定が急に変わるとパニックになるなど、総じて変化することに抵抗が強い方が多いです。また、感覚過敏といって、痛みや大きな音、身体の冷えや熱など感覚刺激にとても敏感だったり、その逆にとても鈍感だったりします。


最近は、マスコミなどでも「発達障害」が取り上げられていますね。「KY」ということばがはやり始めたのは2007年ころです。そのころ以降から、「コミュニケーション偏重主義」ともいわれるほど、今の世の中は、学校でも、就職、会社などでコミュニケーションスキルが対人評価の大きな要素になっています。昔の職人気質といわれる人たちは、寡黙でも黙々とまじめに仕事をこなし、仕事ぶりで尊敬されていました。しかし世の中が機械化、合理化し、職人さんたちの活躍の場が少なくなってしまったため、そういうタイプの方が会社で管理職などになり、部下に指示したり、人間関係の調整をすることを求められると、適応できない人もいます。元々の特性と、求められる環境の不一致から問題が生じるわけです。そのため2次的にうつ病や不安障害を発症し、心療内科を訪れる方が増えてきています。もともと発達障害的傾向のある方は、例えばうつ病を発症して、通常の薬物療法中心の治療をしてみても、表面的な症状は軽減しますが、求められる状況が変わらなければ、満足できる改善は難しいでしょう。難治性のうつ病といわれる方の中には、このような方が一定数いらっしゃると思います。


当院では、まず補助的に心理検査をして、問診と検査結果を合わせて診断をします。その上で、今困っている問題を整理し、症状に対して必要なら薬物療法、環境の調整、就労について障碍者雇用を検討する、などの治療・アドバイスを行っています。

大人の注意欠如多動性障害(ADHD)

 以前は「子どもの病気」とされていましたが、ここ数十年で成人になってもADHDの症状が持続していることがわかってきました。子供の典型例としては、歩けるようになるより先に走り出す、休みなく動きまわり、じっとしていることが難しい。学校でも集中できずにいるので、知的には低くないのに成績が悪かったり、黙っていられないので、思いついたらなんでも言ってしまう、などです。
 思春期になると、多動性は減り、一見落ち着いたようにみえますが、かんしゃく、気分が変わりやすい、集中できないなどの問題を抱えていることが多いです。アルコールや違法薬物を使用したり、ほかの非行に及ぶこともあります。
 しかし、軽度だと大人になるまで「ちょっと落ち着きがないな」程度で過ごし、社会に出て、仕事でいろいろなことを要求されるようになると、もともと持っていた特性が、「困ったこと」「なんだかうまくいかないこと」として表れてきます。会議中そわそわして、出たり入ったりしたり、貧乏ゆすりが止まらない、とか。思ったことを不用意にいってしまい、相手に不愉快な思いをさせたり、締め切りが守れない、計画的に段取りよく仕事ができない、複数の仕事を頼まれると、どれか忘れてしまう。一つのことを終わらせないと、次のことができず、時間がかかってしまう、ケアレスミスが多い、整理整頓が苦手などです。
 でもシングルタスク、つまり一つのしかも興味のあることは、時間を忘れるほど没頭して、ご飯も食べずにやりつづけたりすることもあります。本当は、「障害」というより、「特性・個性」と考えるべきなのでしょう。いわゆる「職人さん」的な、コツコツとひとつのことを集中して極めていく仕事に適性があるのだと思います。また発想力や直感力もあり、うまく仕事に生かせれば、成功しているひともいます。歴史上の人物もADHDだったのでは、という人もたくさんいます。エジソン、織田信長、坂本龍馬、モーツァルト、アインシュタインなどなど。

診察は、まず本当にADHDなのか、診断することからです。
診断にあたっては、もしお手元にあるなら小学生のことからの成績表(通知表)などがあればお持ちください。またご家族からの話も聞けたら幸いですが、不可能な場合はなくても結構です。心理検査も行います。
診断されたのちは、何をゴールにするのかを話し合います。
発達障害の治療は「ハビリテーション」といわれています。
ハビリテーションとは、今ある能力を最大限発揮し、その能力を新たに開発し、自立心を向上させ、生活の質をより豊かにするということです。
 今困っていること、やりづらいことについての解決が優先ですが、その先の生活や人生を、より自分らしくどう組み立てていくかまで、
 お手伝い出来たらよいなと思っています。必要であれば、薬物を使用することもあります。現在大人のADHDに使える薬物(当院で処方可能なもの)は、「ストラテラ(アトモキセチン)」「インチュニブ(グアンファシン)」「コンサータ(メチルフェニデート)」です。

就労に関して、一般就労が難しければ、障碍者就労も検討しましょう。最初に精神科受診後、6か月以上経過すれば、精神障碍者手帳を申請できます。

ASDとADHDの関係について

大人だとASDよりADHDが5倍くらいあるといわれています。両方の特性をもっている方も多く、共通した特徴としては、日常生活で似たようなトラブルがみられます。
① 毎回忘れる。見ていても気づかない。
② 話が一方的で、キャッチボールができない。話がぽんぽん飛ぶ。
③ 順番が守れない。会話にも割り込んでくる。
④ 距離がとれない。なれなれしい。
⑤ 何度も同じ失敗を繰り返す。何度言ってもやってしまう。
などです。鑑別については
① ASDは幼少時より集団にとけこめないなど、対人関係に困ったことが早期にありますが、ADHDは思春期以降に2次的に生じることが多い。
② ASDの人は、「同じパターン」であることにこだわることが多い。
③ 衝動的な問題行動は、ADHDよりも、ASDの人の方が重症化して、入院するくらいのひとはASDの人が多い。
皆さん混乱しやすいところだと思います。わからなかったらまた外来でご相談ください。

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